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  3. 超高齢化時代の新しい可能性を社会に問いかけるコーポレートPR支援を実施(前編)

高齢化・長寿化が進み、「人生100年時代」をむかえた日本。65歳以上の高齢者の割合が人口の約29%を超える「超高齢社会」に突入(※1)するなか、これまでの定年制度は見直しを迫られ、シニアの就労や社会参加が大きな社会課題のひとつになっています。それと同時に、少子化もますます加速し、さまざまな産業分野において深刻な人手不足が懸念されています。マンション管理業務もそのひとつ。日本の分譲マンション総ストック数が年々増加(※2)しているのに対して、マンション管理会社の多くが「求めている数の採用ができない(※3)」という状況に。人材不足により、サービス品質の保持が一層困難な状況になっています。 

これら「高齢者の雇用」と「マンション管理の人材不足」、ふたつの社会課題を結びつけ、シニア人材の力を活用してより高品質なマンション管理サービスの創出による社会変革を目指しているのが、2002年に設立した株式会社うぇるねすです。

2023年9月よりオズマピーアールが広報支援を開始し、人材採用の活性化や企業・事業の認知度アップに向けた広報活動基盤の整備・メディアリレーションズ活動に取り組みました。

【背景と課題】

深刻な人手不足、変容するライフスタイルを背景に
急務となるシニア人材の確保と体制づくり

就労意欲のある元気な高齢者=アクティブシニアを、人手不足に困るマンション管理の現場に“ピンチヒッター”として派遣するマンション管理員サービス事業を展開する株式会社うぇるねすでは、2023年8月現在、平均年齢70歳・約2,500名(コンシェルジュを含めると約3,000名)が「代務員(※4)」として登録し、マンション管理会社からの要望を受け、全国1万棟以上のマンションで活躍しています。 

設立から20年が経過し、順調に実績を積み重ねてきた株式会社うぇるねすですが、「高齢者雇用」「マンション管理の人材不足」という社会課題を打破する企業理念・事業内容が評価され、マンションの管理棟数は年々増加し、日本全国で1万棟超のマンションで管理サービスを展開しています。今後もその社会的要請に応えるため、さらなるシニア人材の獲得と体制強化が急務となっています。

<代務員数の年別推移>(2023年8月28日時点)
事業拡大に伴い、代務員の数は右肩あがりで増加

<2023年8月28日時点の代務員の年齢構成>
平均年齢70歳 最高齢90歳の代務員が現場で活躍

<マンション管理棟数の年度推移>

こうした状況を踏まえ、今回、コーポレートPRを行うにあたり以下のゴールを設定しました。

●高齢者の働き方・雇用に貢献するうぇるねすの事業を広く社会に認知・理解してもらうこと
●そのための企業広報体制(特にメディア露出獲得体制)の整備・土台づくり

(社会視点で企業・事業の提供価値を考える)

(パブシリティ活動の流れ)

【問い・提唱】

「シニア人材」「マンション管理」に関する古い固定概念をくつがえす/コーポレートPR活動の実施にあたって、「ブランド価値」「社会的価値」の双方の視点から「最適解」を考える

うぇるねすのパブリック・リレーションズ活動を支援するにあたっては、企業・団体の「ブランド価値」と、より良い世の中の実現に向けた「社会的価値」が両立する新しい「あたりまえ」をステークホルダーと共創しながらつくっていくオズマピーアール独自の「社会デザイン発想®」をもとに、「問い」を立てることから、うぇるねすの提供価値を編集していきました。

(社会デザイン発想®)

●人的リソースとして、シニアの価値は低いのか?

これまでの日本の定年制度に見られるように、ある一定の年齢に達すると身体機能や体力の低下によって戦力外とみなされ、リタイアを余儀なくされてきました。しかし、実際には就労に対する意欲が高く健康で活発なアクティブシニアが増加(※5)。高齢者本人はもちろん周囲の人々も、シニア=リタイアという固定概念を見なおすべき時代に突入しています。

●マンション管理業務は誰にでもできる仕事なのか?

マンション管理としてまっさきに思い浮かぶのは清掃業務であり、誰にでもできる簡単な仕事だと思われがちです。しかし、不動産業界に携わっていた経歴を持つプロジェクトメンバーの久保田は、清掃自体、迅速かつ適切に行うには知識やスキルが必要であることに加え、住人の安全管理や生活サポートなど幅広いスキルも求められること、また、マンション管理の品質が建物の資産価値に関わるほど、重要な役割を担っていることも現場経験をもって理解していました。そして、うぇるねすの広報担当者様へのヒアリングや研修現場の見学を踏まえて、うぇるねすの質の高いマンション管理を実現する独自の強みの数々に驚き、これらの用にしっかりと焦点を当てるようなパブリックリレーションズ活動が必要であると捉えました。

●シニア世代にデジタル対応の「壁」はあるのか?

株式会社うぇるねすでは、業務を円滑・的確に遂行するために迅速な情報共有を可能にするwebアプリ『Dマネ』を活用したDX管理システムを確立。代務員はeラーニングも活用しながら技術・知識を向上していく環境を整備しています。「高齢者にはデジタル機器は使えない」という思い込みは間違い。株式会社うぇるねすでは、シニアスタッフがスマートフォンを使いこなし、日々情報収集や業務に取り組んでいます。

(シニア全員が業務でスマホを活用「デジタルシニア人材」として活躍)

【巻込・喚起】

「シニアリスキリング人材」と共に、
一流のマンション管理業務を提供する株式会社うぇるねすの魅力を訴求

学び直し(リスキリング)したシニア人材と共に、入居者の満足・資産価値の向上など付加価値の高いマンション管理を提供するうぇるねす独自の取り組みや強みを通して、時代が求めるビジネスモデルであることを訴求。「ブランド価値」と「社会的価値」という時代が求める新たな価値を生み出す企業であることを、広く告知し、理解を得ていく方向性でコーポレートPRを展開しました。

<具体的なPR施策>

●広報活動の基盤づくり

企業の歴史や事業内容をまとめた企業紹介パンフレットではなく、事業を取り巻く時代や背景、事業活動が果たす社会的役割や経済的役割を、裏付けとなるデータを交え編集したプレス向けファクトシートを制作しました。また、うぇるねすの事業に関連するメディアリストも独自に作成しました。

●臨場感ある社内スキルアップイベントを活用したメディアリレーションズ活動

「シニアの働き方・より良い生き方」「マンション管理業界の課題」「シニア×DXの意外な組み合わせ」などをフックに、元気に働くシニアたちを取材できる場として、スキルアップイベント『うぇるねすシップ』をPR活動に活用。実際に代務員が集まる(=取材・撮影できる場面がある)臨場感ある教育の現場を取材してもらうことでメディアの深い理解を得ていただき、取材メディアそれぞれのニーズを汲みながら、さまざまな切り口からのパブシリティ獲得を目指しました。

社内研修イベント「うぇるねすシップ」を開催
平均年齢70歳 最高齢90歳 約500名のシニアDXマンション管理員が集合

スキルアップイベント「首都圏うぇるねすシップ」開催
マンション管理のピンチヒッター約1,000名のDXシニア人材が集結

【結果とこれから】

2023年9月から2024年1月の約5カ月間で取り組んだコーポレートPR活動の結果、85件(広告換算額にして約3,500万円※参考指標)のメディア露出を獲得しました。福岡都市圏でのテレビ番組における約3分間にわたる特集放映、関西圏・首都圏でのニュース放映、大手経済誌が運営するオンラインWEBメディアでの掲載、ブロック紙における九州広域での社会面での掲載など、多種多様な媒体での露出を実現。露出内容も「働くことに関して年齢の先入観を取り払うことの大切さ」を考察する記事や、「社会経験豊富で責任感が強いシニア人材独自の価値があるのではないか」と、うぇるねすのスキルアップイベントの取材を通じて報せるテレビ放映など、超高齢化時代の新しい可能性を社会に問いかけるものとなりました。 

2023年9月から始まった本プロジェクトは、まずはコーポレートPRのための基盤を整え、メディアリレーションズ活動の基盤を整理した段階です。今後も社会価値・事業価値の両視点をもって、採用増加や事業拡大に貢献するようなパブリック・リレーションズ活動の提案・実施を行っていきたいと考えています。

【プロジェクトメンバー】

リレーションズデザイン本部 関西オフィス
川端 里歩  久保田 敦  田中 日奈子  吉田 真佐浩

コーポレートコミュニケーション本部 コーポレートコンサルティング部
福田 敦

(※1)総務省統計局ホームページ(2023/9/17発表)
「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」

(※2)国土交通省「マンションに関する統計・データ等」
2022年末時点の分譲マンション総ストック数は約684.3万戸

(※3)株式会社うぇるねすが2023年8月に
マンション管理会社向けに開催したセミナーで回収したアンケートにおいて
管理員採用時の課題として、51社のうち41社が「求めている数の採用ができない」と回答

(※4)代務員=管理会社の常勤管理員の休暇・退職などに伴い、単発・長期で当該マンションの管理員として派遣される代行管理員

(※5)スポーツ庁ホームページ
「平成30年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について」
高齢者(65-79歳)の体力・運動能力は握力・上体起こし・開眼片足立ち・6分間歩行など、ほとんどの項目が上昇傾向

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